この痛みには何が効く?痛み止めの種類と選び方
こんにちは、天6整形外科理学療法士の二宮です!
夏も終わりが近づいていますが、相変わらず猛暑が続いております。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?水分とミネラル補給を怠らず、熱中症に注意してくださいね。
さて、前回は痛みについてのコラムを投稿しました。痛みへの対処方法なども簡単に記載しましたが、今回はそれに関する内容として、痛み止めの種類と選び方についてお話をしていきます。
前回のおさらいを簡単にした後、内容に入っていきましょう。
今回のお品書きは以下の通りです。じっくり読みたい方は最初から、ざっくり知りたい方はまとめから、読み返しの方は気になる部分からお読みください!
目次
前回のおさらい
前回のおさらいです。前回の内容は
- 痛みとは、身体の不調を教えてくれるサインではあるが、長く続くと大きなストレスになる
- 痛みは大きく分けて3種類、明確な傷などによる侵害受容性疼痛、神経の狭窄などによる神経障害性疼痛、ストレスが原因となる心因性疼痛がある。
- 痛みは種類によって対処法が違う。それぞれに見合った対処を。
というものでした。
詳細についてはこちらから確認をお願いします。
前回のお話の中で、何度か「痛み止め」、「鎮痛薬」の言葉が出てきたと思います。
痛みに種類がある以上、痛み止めにも「どの痛みに効くか」、「痛みをどのように抑えるのか」などによる種類が複数あります。
今自分が飲んでいる痛み止めが何を目的としたものなのか、どんな風にして効く痛み止めなのかを知っておくと、実際に薬があっているかどうかなどの判断にも役立ちます。
では早速、痛み止めの種類について見ていきましょう。
痛み止めの種類
痛み止めは、どの痛みに効くのか、痛みをどのような機序(方法)で抑えるのかによって、様々な種類に分けられます。
比較的メジャーなものから順にお話していきます。
NSAIDs(非ステロイド消炎鎮痛薬):ロキソニン、セレコックス、ボルタレンなど
NSAIDsはいわゆる「痛み止め」として良く処方されるロキソニンなどの鎮痛薬のことです。
炎症による痛みを出してしまうプロスタグランジンという物質の産生を抑えることで炎症を鎮め、鎮痛効果を発揮します。したがって炎症の無い痛みにはあまり効きません。
〇ロキソニンを飲み続けると効果が薄くなる?
ロキソニンを飲み続けると効果が薄くなるといいますが、それは炎症が落ち着いたからです。
また、ロキソニンなどNSAIDsは胃が荒れるといいます。NSAIDsで産出を抑えられるプロスタグランジンは胃の粘膜の保護作用を担っている物質でもあります。これの産出が抑えられるために、ロキソニンを飲むと胃が荒れやすくなります。逆に言うとロキソニン以外の痛み止めでは「胃が痛くなる」ことはあまりありません。
また、NSAIDsはアスピリン喘息の症状を誘発してしまいます。そのため、アスピリン喘息のある方は使用してはいけません。(ぜんそく症状全般に使用できないわけではありません)
例外として、セレコックスはNSAIDsの中ではアスピリン喘息の症状を誘発しないように作られているので、使用できます。
詳細不明のぜんそく症状がある場合は、受診の際に必ず医師に相談をしましょう。
ステロイド(副腎皮質ホルモン薬):プレドニゾロンなど
ステロイドは、NSAIDsがプロスタグランデジンを作る過程を抑えるのに対して、その前段階であるアラキドン酸の働きを抑えるため、NSAIDsよりも強い抗炎症作用があります。
このように、ステロイドには非常に強力な鎮痛作用がありますが、その代償に糖尿病や高血圧、胃潰瘍などの消化管潰瘍、骨粗しょう症、免疫力の低下、お腹周りを中心に肥満が進む中心性肥満や満月様顔貌(ムーンフェイス)などの副作用があります。
また、低頻度ではありますが、その他の副作用として大腿骨頭壊死や白内障、緑内障、にきびなどもあります。
さらに、ステロイドは急にやめると強い離脱症状が生じてしまうので、ご自身の判断でやめてしまうことは非常に危険です。
ステロイド鎮痛薬は効果的ではありますが、副作用でかえって身体を悪くしてしまわないように必ず医師の指示の下に使用するようにしましょう。
オピオイド薬:ノルスパンテープ、トラマール、トラムセットなど
オピオイド薬は、脳神経系の様々な部位にあるオピオイド受容体(センサー)に作用し、神経伝達物質を減らす作用があります。オピオイド受容体には様々な種類があり、痛みを担当する神経に作用すると鎮痛効果を示します。
ドーパミンを担当する神経に作用した場合、多幸感が発生するため、依存性が懸念されます。しかし、強い痛みを感じている人は不快感を発生させるダイノルフェンが増えることでドパミンが枯渇するため、結果的には多幸感が発生せず依存は起きないと言われています。
カルシウムチャンネル阻害薬(α2δリガンド):リリカなど
リリカなどのカルシウムチャンネル阻害薬は、主に神経障害性疼痛に対しての鎮痛薬として用いられます。神経障害性疼痛が生じている際、痛み刺激を伝える神経伝達物質が過剰に出ている状態になっており、その大量の痛み刺激を神経が受け取ってしまうと疼痛が生じます。
カルシウムチャンネル阻害薬は神経が痛み刺激を受け取るのを阻害することで、鎮痛効果を示します。
主な副作用としては、めまい、眠気、ふらつきがあります。服用後副作用が見られた場合は、転倒への注意はもちろんのこと、車や自転車の運転もできるだけ避けましょう。
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬:サインバルタなど
サインバルタなどの薬は脳から痛みを抑えようとするシステムである下降性抑制系に作用し、その働きを強める薬です。日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛ガイドラインでは第1選択薬にされています。
オピオイド薬として紹介したトラマールも体内で代謝されてオピオイド作用が生じるまでは下降性抑制系に作用する薬です。サインバルタと併用する際はセロトニンが増えるので注意が必要です。
うつ病の薬も下降性抑制系に作用し有効ですが日本では痛みの適応症とはなっていません。
その他:カロナール(アセトアミノフェン)、ノイロトロピン
カロナールはこどもの解熱薬で良く使う薬です。炎症を抑える効果はほとんど無く、脳をごまかすような形で作用し、効果を発揮すると考えられています。欧米では変形性関節症の第1選択薬になっています。
ノイロトロピンは脳幹の下降性抑制系に作用するといわれています。
どちらも比較的副作用の少ない薬で、ある程度量を多く服用しないと効果は少ない傾向です。
痛み止めの種類については上記のように分けられます。
痛み止めには上記のような種類があるとなんとなく把握した上で、医師からの処方を受けるとより処方の理由がわかるため安心して服用ができるかと思います。
当院での痛止めの処方について
当院では基本的にはお薬の数はあまり多く出さず、状態の改善に合わせて減らしていく方針でお薬の処方をしています。
しかし、実際は様々な種類の痛みが同時に出ていることがほとんどですので、二種類の痛み止めを同時に処方するなど、考えられる痛みの種類に合わせて複数の痛み止めを処方することも多々あります。
複数の痛み止めが出るなどの場合、疑問に思うこともあるかもしれませんので、お薬の処方についての気になる点があれば受診の際や受付にてお気軽にお問い合わせください。
最後に
整形外科疾患において、痛み止めはたしかに身体の痛みを軽減してくれますが、その痛みを出してしまう誤った動きや、生活での癖など、根本的な部分が改善されるわけではありません。
お薬とリハビリを組み合わせての治療が重要となります。
天6整形外科では、手術が必要になる前に身体を治す、怪我をしてしまわない身体を作ることをモットーに診療を行っています。
- お薬や湿布を使っても一時的にしか痛みが収まらない
- 日常生活のちょっとした動きで痛みが出てしまう
というお悩みをお持ちの方は是非当院にお越しください。
症状が悪化し、日常生活が困難となる前に受診をすることが、早期に回復するためには重要です。
簡単なお悩みでも構いません、皆様のご来院をお待ちしております。