肩の痛みについて解説【肩こり?五十肩?痛みは勝手に治る?】
こんにちは、天6整形外科理学療法士の二宮です。
当院に来院される患者様には、肩の痛みを訴えられる方も非常に多くおられます。
そして、その多くが半年〜1年といった長期間痛みを我慢し、症状が重くなってから来院されている印象を受けます。
なんのきっかけもなく急に痛むことも、なにか作業をしていて痛むことも、よく使う関節だからこそ痛むことが多い肩。
ただの肩こりの場合もあれば、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩・四十肩)や肩腱板断裂のような肩の動きに影響を及ぼす疾患の場合や、頚椎ヘルニアなどの頸部の神経疾患のような場合などもあり、ただの肩の痛みといえど侮れない場合もあります。
今回のコラムでは、
「肩が痛いけど五十肩?病院に行ったほうが良いの?」
「腕の上がりが悪くなってきたけど疲れているだけ?診てもらったほうがいい?」
「知り合いから五十肩は放っておけば治ると言われたけど本当?病院いかなくて大丈夫?」
といった、肩の痛みについてその対処と、自分でもできる治療方法についてお話していきます。
それでは、早速内容に入っていきましょう。
目次
肩の痛みが生じる疾患
肩の痛みが生じる疾患には様々なものがあります。
また、痛みの程度はどのような肩の疾患においても個人差が大きく、この疾患だから痛みが強い、腕が上がらない、肩こり程度の痛みだから大した疾患ではない、ということも言い切れません。
痛みの原因がただの肩こりである場合もあれば、肩の筋肉の腱の部分の断裂や、神経系の疾患の場合もあります。
疾患によっては放置すると手術が必要となるものもあり、強い痛みがあるのに関わらず、強めの肩こりと思って放置してしまうと大変なことになる場合もあります。
そんな肩の痛みの原因となる疾患について、どのようなものがあるのかを確認していきましょう。
肩こり
ここでは、病的でない痛みを総称して肩こりと定義します。
肩こりは、肩や首、背中の筋肉が緊張し、痛みや不快感を感じる状態であり、明らかな炎症所見や、筋・腱の断裂、骨折などは見られません。
デスクワークや長時間のスマートフォンの使用、不良姿勢、ストレスなどに伴う筋肉の緊張により血流が悪くなることが主な原因とされています。
肩こりの症状は肩の重さや痛み、首のこりが主ですが、頭痛、手のしびれなどが生じる場合もあります。
治療方法
生活習慣の改善
特徴でも述べたように、肩こりは悪い姿勢を長時間取り続けたりなどの生活習慣が背景が主な原因とされます。
これらの改善をするために以下のようなものをご提案させて頂く場合が多いです。
- 肩や背中のストレッチを行う。
- 姿勢を改善し、デスクや椅子の高さを調整する。
- ストレス管理を行う。
お薬での治療
痛みを和らげるために、鎮痛薬やミオナールのような筋肉の緊張を緩める薬を使用することもあります。
痛みが緩和されると、痛みにより助長されていた不良な姿勢などの生活習慣も同時に緩和しやすくなります。
肩こりは一般的には生活習慣の改善で効果が期待できますが、症状が改善しない場合や痛みがひどい場合、神経症状が現れた場合には、整形外科の受診をおすすめします。
肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)
肩関節周囲炎、通称「五十肩(四十肩)」は、骨折や脱臼、筋断裂などの明らかな原因がない状態で、肩関節を取り巻く組織(筋肉、腱、関節包など)が炎症を起こし、痛みや可動域の制限(拘縮)を引き起こしてしまっている疾患を良います。
40代から60代の中高年に多く見られるため、俗称として五十肩(四十肩)と言われています。
初期は肩の痛みが強く、次第に肩を動かす範囲が狭くなることがあります。
痛みが消えた後、通常であれば徐々に肩の動きは改善がみられますが、個人差もあり、肩の動きが固く制限されたまま戻らない場合もあるため、痛みが出だしたら早めに整形外科で受診することをおすすめします。
治療方法
セルフケア
診察を受けていただいた際にセルフケア(自主訓練)をお伝えします(具体例を後述しています)
実施する際には、肩のセルフケアの基本のルールとして以下を必ずお守り下さい。
- 無理のない範囲で肩を動かす(小さい範囲でも痛くない範囲だけをしっかり動かす)
- 痛くても完全に安静にはしない(拘縮という、関節が硬く動かない状態になってしまいます)
- 無理して動かそうとはしない(痛みで重症化する可能性があります)
理学療法
当院では、肩関節周囲炎の治療の一貫として、リハビリ(理学療法)を実施しています。
理学療法士によるリハビリにより、固くなった筋肉や関節をほぐしたり、症状の影響により弱くなった筋肉を鍛えたり、うまく動かせなくなった肩関節の動きを再獲得を図ったりしながら治療をします。
理学療法においても、患者様の状態に合わせてセルフケア(自主訓練)をお伝えすることがあります。
お薬での治療
痛みを和らげるために、鎮痛薬や抗炎症薬を使用することがあります。
炎症がひどい場合には、ステロイド注射が行われることがあります。
手術の必要性について
肩関節周囲炎で手術が必要となることは少ないですが、以下の場合に手術が検討されることがあります。
- 長期間のリハビリや薬物療法に効果がなく、肩の可動域が著しく制限されている場合
- 肩関節の内部に癒着(組織が異常にくっついてしまう状態)がある場合
このような場合には、関節鏡視下授動術(内視鏡を用いて関節内の癒着を取り除く手術)が行われることがあります。
この手術により、肩の動きを回復させることが期待されます。
肩関節周囲炎は時間の経過とともに自然に回復することが多く、「放っておけば治る」と言われがちですが、早期治療・回復や重症化の予防のためには、早めの整形外科受診をすることが重要です。
石灰沈着性腱板炎
石灰沈着性腱板炎は、肩の腱(けん:筋肉と骨をつなぐ組織)にリン酸カルシウムなどの石灰質が沈着し、炎症を引き起こす疾患です。
このに炎症により、突然の激しい肩の痛みや可動域の制限が生じます。
特に40代から50代の女性に多く見られます。
生じる症状は肩関節周囲炎とよく似ていますが、痛みが肩関節周囲炎よりも強い場合が多く見受けられます。
治療方法
セルフケア
肩関節周囲炎の場合と同様に、診察を受けていただいた際にセルフケア(自主訓練)をお伝えします(後述:リンクする)
実施する際には、肩のセルフケアの基本のルールとして以下を必ずお守り下さい。
- 無理のない範囲で肩を動かす(小さい範囲でも痛くない範囲だけをしっかり動かす)
- 痛くても完全に安静にはしない(拘縮という、関節が硬く動かない状態になってしまいます)
- 無理して動かそうとはしない(痛みで重症化する可能性があります)
理学療法
当院では、石灰沈着性腱板炎の治療の一貫として、リハビリ(理学療法)を実施しています。
理学療法士によるリハビリにより、痛みによってこわばった筋肉や関節をほぐしたり、症状の影響により弱くなった筋肉を鍛えたり、うまく動かせなくなった肩関節の動きを再獲得を図ったりしながら治療をします。
理学療法においても、患者様の状態に合わせてセルフケア(自主訓練)をお伝えすることがあります。
お薬での治療
痛みを和らげるために、鎮痛薬や抗炎症薬を使用することがあります。
炎症がひどい場合には、ステロイド注射が行われることがあります。
手術の必要性について
石灰沈着性腱板炎では基本的に手術は行わず、お薬での治療や理学療法の他、以下の治療が選択される場合があります。(当院では行っておりません)
- 石灰を穿刺吸引する
- 体外衝撃波により石灰を砕く
まれな例として、関節鏡視下手術にて石灰を直接取り除く手術が行われる場合もあります。
その場合は、腱板の状態によっては後述する腱板断裂の場合と同じように腱板を修復する場合もあります。
石灰沈着性腱板炎は強い痛みが生じやすく、肩関節周囲炎よりも肩が動かせない場合も多く見られます。
痛みを我慢せず、早めに整形外科を受診し、早期の治療開始が重要です。
肩腱板断裂
腱板断裂は、肩の腱板(肩関節を安定させるために働くインナーマッスルの腱の部分のこと)が部分的または完全に断裂する状態です。
部分断裂を腱板損傷ということもあります。
これにより肩の痛みや筋力低下、可動域の制限が生じます。
多くの場合、繰り返しの動作や加齢、外傷(転倒や重い物を持ち上げた際の事故)などが原因となります
腱板について
腱板は、肩関節を安定させるために働く筋肉とその腱からなる構造体で、「ローテーターカフ」とも呼ばれます。
腱板を構成する筋肉は以下の4つがあります。
- 棘上筋(きょくじょうきん)
- 棘下筋(きょくかきん)
- 小円筋(しょうえんきん)
- 肩甲下筋(けんこうかきん)
これらの腱板を構成する筋肉は、いわゆるインナーマッスルに分類される筋であり、肩のアウターマッスルとともに連携して働くことで、肩関節のスムーズな動作を可能としています。
腱板断裂では、この筋同士の連携が破綻するために肩の動作の制限が生じます。
腱板断裂の原因
腱板断裂の原因は様々なものがあり、例としては以下が挙げられます
- 加齢による変性: 腱板は年齢とともに弱くなり、断裂しやすくなります。
- 外傷:転倒や事故などで肩に強い力が加わると、腱板が断裂することがあります。
- 反復動作: 重い物を繰り返し持ち上げるなどの動作が腱板に負担をかけ、断裂を引き起こすことがあります。
治療方法
理学療法
当院では、腱板断裂の患者様に対して、リハビリ(理学療法)を実施しています。
断裂した腱板は自然に修復されることはありませんが、理学療法士によるリハビリにより、切れていない残存している腱を使って痛みなく肩が動作できるように動作の訓練を行ったり、痛みにより固くなった筋肉や関節をほぐす、弱くなった筋肉を鍛える、などして、再度痛みなく満足に肩を動かせる状態を目指していきます。
お薬での治療
痛みを和らげるために、鎮痛薬や抗炎症薬を使用することがあります。
炎症がひどい場合には、ステロイド注射が行われることがあります。
手術の必要性について
断裂した腱板は自然に修復されないため、以下の場合に手術が検討されます。
- 保存療法を行っても痛みや可動域が改善しない場合
- 断裂の範囲が大きく、肩の機能が著しく低下している場合
- 若年層で断裂がある場合
- スポーツを職業にしているなどで肩の機能回復が重要な場合
このような場合では関節鏡視下腱板修復術(内視鏡を用いて断裂した腱板を再度骨に縫い留める手術)が行われることがあります。
また、断裂が大きく上記の手術が難しい場合には、関節鏡視下上方関節包再建術や、リバースショルダー型人工肩関節置換術などが行われることもあります。
腱板断裂の治療は患者の年齢、活動レベル、断裂の範囲や場所により異なるため、適切な治療法を選択するためには、整形外科での診察と相談が必要です
ただの肩こりかな?そのうち治るかな?などと放置してしまうと、断裂のサイズが大きくなったりなど重症化する場合もありますので、早めの整形外科受診をおすすめします。
頸部の疾患
頚椎ヘルニアや頚椎症など頚部の疾患の影響により肩の痛みがでることもあります。
神経の絞扼の影響や頚部疾患の影響による頚椎の姿勢の悪さの影響など、肩の痛みの原因が生じる理由には様々な影響が考えられますが、整形外科を受診してみたら肩ではなく頸部疾患の診断がつくということは意外とよくあります。
具体的な疾患名を出しての解説は今回のコラムでは割愛しますが、症状によっては手術が必要な場合もあります。
上記のように、肩の痛みの原因には、肩こりのように病的なものでないものから、腱の断裂や肩ではなく頸部の影響である場合など様々なものがあります。
どのような症状でも、自己判断で放置してしまうと治癒に時間がかかったり、手術が必要になってしまう場合があります。
「診察を受けてもどうせ何も無い」と言わず、むしろ「本当に何も無いかを確認する」目的で受診をしておくことをおすすめします。
肩の痛みがある時の対応の仕方
ここでは、肩の痛みある時の対応の仕方について説明していきます。
判断を間違えると、手術が必要になったり、手術をしても治りきらない場合があるため、ここでのお話は重要かもしれません。
まずは受診がおすすめ
酷い肩こりがあるな?腕があがりにくいな?など肩に関して気になることがある場合、ちょっとしたことだと思ってもまずは受診をしましょう。
受診にてレントゲンやMRIなどの検査をすることで、原因の特定や専門医への紹介も可能です。
五十肩などは放っておけば勝手に治ると言われることがありますが、痛みの強さや肩の動きの状態によっては、関節周囲の組織が癒着してしまい、強い拘縮が生じたために手術が必要になる場合もありますし、腱板断裂の場合は断裂が大きくなってしまい、大きな手術が必要になるケースもあります。
繰り返しになりますが、肩の痛みがあり、気になる場合はまず受診をしましょう。
普段の姿勢も重要
上記の受診以外の対応としては、普段の座り姿勢や立ち姿勢がどうなっているかも重要です。
特に、デスクワークが多い人などはついつい猫背になってしまう場合が多くみられます。
姿勢はストレートネックなどの頸部や腰部に対しても悪影響をもたらします。
椅子の高さや、PCの画面の位置など環境設定で改善できる場合もあるため、一度見直してみましょう。
夜眠れないほどの肩の痛みにはポジショニングを
五十肩などで痛みが酷く、夜眠ることができずに肩以外にも健康問題が生じている非常にお困りの方も多くみられます。
その場合、痛みのある肩の位置をクッションなどで調整すると痛みの軽減があるかもしれません。
具体的な方法は以下の図を御覧ください
上の図のような形で、肘の下と抱きまくらのような形で厚手のバスタオルやクッションを置きましょう。
肘の下のクッションは右図のように肘の高さを肩より高くすることが重要です。(赤線:肩の高さ)
肩の痛みの改善、悪化予防のための自主トレーニング
最後に、肩の痛みを改善する、悪化を予防するための自主トレーニングについて記載していきます。
基本は無理しない、でも安静にもしない
肩に痛みがあり、動かしにくいにも関わらず、なんとか動かせないかと無理やり肩を動かしてしまうことがあるかもしれません。
どの痛みも基本的にはそうなのですが、絶対に無理をして動かそうとしてはいけません。
無理をして動かしてしまうと、症状が酷くなったり、良くない動かし方が癖になってしまったりすることが多く見られます。
しかし、かといって安静にすることもおすすめしません。
肩の痛みは個人差が大きく、少し動かすだけでも強い痛みが生じる場合もあります。
だからといって全く動かさず安静にしすぎてしまうと、拘縮という関節が固く動かない状態になってしまうことがあります。
特に、肩関節は拘縮が生じやすい関節であるため、痛くない範囲が少しでもあるのであれば、ほんの数センチ数ミリ程度でも構わないので、適度に動かしておく必要があります。
肩の動きを改善する自主トレーニング
ここでは、肩のリハビリとしての自主トレーニングの方法を3つほど紹介します。
①振り子運動
振り子運動は肩の自主トレーニングとしてはよく指導される有名な方法です。
その一方で少しむずかしい方法でもあり、間違った方法にもなりやすい運動方法です。
方法としては下図を御覧ください。
まず痛い方の腕を脱力し、垂らした状態にします。
反対の手は壁や机などを持ち、姿勢の支えに使います。
垂らした腕は脱力したまま、体重の前後移動にて身体を前後に揺らすことで、垂らした腕を振り子のように揺らします。
垂らした腕を意識的に動かす方法もありますが、この方法は痛みが強い時にはおすすめできる方法ではありません。腕は脱力したままにしましょう。
②膝さすり運動
膝さすり運動は、その名前の通りただ膝を円を描くように擦るだけの運動になります。
肩関節の回旋運動(捻るような運動)と屈曲伸展運動(腕の上げ下げ)の運動を複合的に行うことができること、常に手のひらが身体に触れているため、痛みを感じにくく、動きもイメージしやすいため余分な力が入りにくいことなどのメリットがある運動であり、私自身も患者様に指導することが多い方法です。
具体的には以下の図のような形になります。
③自動介助での肩挙上運動
この方法はある程度痛みが改善してきている人や、肩の可動範囲の制限が少なく、痛みはあるものの比較的よく動く人に指導することが多い方法です。
下図のように、痛い方の腕の手首を、反対の手で持ち、痛い方の腕は基本的には脱力したまま反対の手の力で持ち上げるようにして動作させます。
痛みが少なければ、肩がすくんだり、痛みが生じない程度の力加減から、少しずつ痛い方の腕にも力を入れて動作させていきましょう。
まとめ:肩の痛みは軽度なうちにご相談を
今回は、肩の痛みについて、代表的な疾患や自主トレの例をあげてお話しました。
ただの肩こりだろう、痛いけどそのうち治るだろうと侮っていてはよくないことがお伝えできていたら幸いです。
天神橋筋六丁目、天満、都島、南森町、東淀川区から通いやすいクリニック、天6整形外科では、手術が必要になる前に身体を治す、怪我をしてしまわない身体を作ることをモットーに診療を行っています。
- 肩が痛いけど放っておいていいのかな?
- 最近腕が上がりにくい気がする
といったお悩みをお持ちの方は是非当院までご来院ください。
早期の治療開始が、症状の悪化を防ぐには最も重要です。
簡単なお悩みでも構いません、皆様のご来院をお待ちしております。