腰痛とは?その種類と原因、治療について
こんにちは、天6整形外科理学療法士の二宮です。
街の整形外科である当院には連日のように腰痛を訴える患者様が来院されます。
そんな腰痛ですが、腰痛の原因は◯◯だ!!のようなワードが独り歩きしており、患者様自身も情報に振り回されている様子がよく見受けられます。
今回は、そんな腰痛について、当院で行っている治療の紹介も交えながら、腰痛の種類と痛みの特徴、原因、治療方法などを解説していきます。
目次
腰痛とは
腰痛には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 特異性腰痛:原因がはっきりと特定できる腰痛。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など明確な所見から病名がつけられる。
- 非特異性腰痛:医師の診察や画像検査(X線やMRIなど)で腰痛の原因が特定できない腰痛。
腰痛の大多数は非特異性腰痛で、全体の85%を占めるとされます。
非特異性腰痛は、普段の姿勢などの生活習慣に関連が考えられるものの、はっきりとした骨や関節の病変、神経の症状がみられず、痛みの原因が特定しづらい腰痛です。
腰痛に関してはこちらのページにも記載がございます。
腰痛でレントゲンを撮る理由
どのような腰痛であっても、医療機関では多くの場合でレントゲン撮影を行います。
「ただ腰が痛いだけなのに大げさだな」と思う人もいますよね?
腰痛でレントゲンを撮る理由には、腰痛診療ガイドライン2019で定義されている、腰痛のRed flagsが関係しています。
腰痛のRed flagsとは、言葉の通り赤旗、つまり危険信号を表しています。
この危険信号がある場合、重篤な脊柱疾患(悪性腫瘍、感染、骨折など)の合併を疑います。
腰痛のRed flagsは以下の通りです。
- 発症年齢が20歳未満または55歳以上
- 時間や活動性に関係のない腰痛
- 胸部痛
- 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及ぶ神経症状
- 構築性脊柱変形
- 発熱
これらのRed flagsがある場合に、重篤な脊柱疾患である可能性を除外する目的で腰痛におけるレントゲン撮影は行われます。
と、少しただの腰痛と侮るなかれと申すような怖くなる話をしましたが、すでに述べましたように腰痛全体の85%は非特異性腰痛です。
非特異性腰痛は生活に支障こそ出るものの、重篤な疾患ではありません、安心してください。
今回のコラムでは、多くの人が経験しやすい、非特異性腰痛について解説していきます。
腰痛(非特異性腰痛)の種類
非特異性腰痛には、椎間関節性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛、筋筋膜性腰痛の4種類があり、痛みが生じる部位によって名前がつけられています。
それぞれについて見ていきましょう。
椎間関節性腰痛
椎間関節性腰痛は、背骨の後方で上下の背骨同士を繋ぐ椎間関節に生じる腰痛です。
背骨の曲げ伸ばしや左右へ捻るような動作は、この椎間関節の動きによって生じます。
椎間関節性腰痛では、この椎間関節が炎症を起こしたり、動きが悪くなることにより腰痛が生じます。
痛みの特徴
椎間関節性腰痛は上の画像のように背骨の横側にある椎間関節に痛みが生じる腰痛で、左右どちらかのみに起こりやすく、局所的な痛みであることが多い傾向にあります。
痛みが長引いたり、重症化したりするとお尻や太ももの裏側に痛みが広がることもあります。
安静時には痛みはなく、腰を反らせたり捻ったりする動きで痛みが出現します。
椎間板性腰痛
椎間板性腰痛は、スポーツや加齢に伴う椎間板の変性・損傷により起こる腰の痛みです。
正常な椎間板にはほとんど神経が通っておらず、椎間板そのものが傷ついてもそれほど痛みは感じませんが、スポーツや加齢に伴い、椎間板の外側の線維輪が損傷すると、その修復のために神経を伴った血管が線維輪の内側に入り込みます。
その結果、本来痛みを感じないはずの椎間板内部にも神経が分布してしまい、椎間板への負荷で痛みを感じるようになります。
痛みの特徴
椎間板への負荷は、背骨を丸めた姿勢が最も高くなります。
そのため、椎間関節性腰痛では腰を伸ばしているときよりもむしろ腰を曲げたとき、具体的には座る時に痛みが出現しやすい特徴があります。
痛みの感じ方としては、腰の真ん中奥が重く痛いと表現されることがあります。
※椎間板ヘルニアとの違いについて
「椎間板性腰痛」と「椎間板ヘルニア」、どちらも腰痛が生じる疾患ですが、実はこの2つは全く違う種類のものです。
椎間板性腰痛は、傷ついた椎間板に神経が入り込むことで痛みを感じる、つまり椎間板自体が痛む「侵害受容性疼痛」と呼ばれるタイプの痛みで、切り傷ややけどなどと同じ仕組みです。
一方、椎間板ヘルニアは椎間板が飛び出し、それが近くの神経を圧迫することで痛みを感じる痛みです。
神経そのものが痛むものであるため、「神経因性疼痛」に分類されます。
しかし、痛み種類の違いから、疾患としては違うものと分類されるものの、椎間板性腰痛は重症化して椎間板ヘルニアに進行することもあれば、椎間板ヘルニアの初期に合併して見られることも多く、関連がないというわけではありません。
仙腸関節性腰痛
仙腸関節という左右の臀部の間にある関節(骨盤の腸骨と仙骨を繋ぐ関節)に生じる痛みのことで、スポーツや激しいエクササイズによる仙腸関節の捻挫や、仙腸関節の関節位置が悪いまま改善されない(不良姿勢が原因となる場合が多い)ことが原因と考えられています。
痛みの特徴
左右どちらかの仙腸関節部に局所的な痛みが生じる場合が多く、また、重症度によっては痛みが鼠径部、ももの裏、下腿にまで広がる場合もあります。
筋筋膜性腰痛
筋筋膜性腰痛は、腰の筋肉や筋膜への急激あるいは慢性的な負荷が原因で起こる腰痛です。
スポーツなどで急に大きな負荷がかかることで発症する場合もあれば、長期的な姿勢の悪さによって筋肉に慢性的に負担がかかり発症する場合もあります。
筋肉や筋膜への負荷が腰痛の原因となっているため、レントゲン検査では骨や椎間板に異常は見つかりません。
痛みの特徴
他の腰痛と比較して局所的な痛みではなく、腰や背中、お尻など広い範囲に鈍い痛みが生じている場合が多く、どこが痛いと指をさせない場合が多い腰痛です。
腰を指圧した際や動作時に痛みが強くなるといった特徴があります。
腰痛の原因
ここまで、腰痛、特に非特異性腰痛についてその種類や痛みの特徴についてお話してきました。
これらの腰痛は痛みの機序についてはわかってはいるものの、なぜ筋膜が痛むのか、なぜ椎間関節の動きが悪くなったのかなどについては、基本的に原因不明であるため、はっきりとこれといった原因は指摘できません。
その一方で、姿勢が関連していることが考えられる場合が多い疾患でもあります。
ここでは腰の痛みの要因の一つである姿勢について解説をしていきます。
姿勢の影響
多くの腰痛患者様において、ほとんどの場合で姿勢の左右差など不良な姿勢が認められます。
腰痛の治療においては姿勢がどのように崩れているのか、なぜ崩れているのかを追求していくと、ある程度腰痛が生じている要因は推定ができ、その要因に対して治療をすることで痛みの改善ができる場合が多いです。
そもそも良い姿勢って?
まず、姿勢が悪いかどうかを判断するためには、正しい姿勢がどのような姿勢であるかを知っておく必要があります。
正しい姿勢とは、以下の画像のように身体を後ろからみた時(前額面)と身体を横から見た時(矢状面)に目印となる身体の部位(赤い点の部位)が一直線に並ぶ姿勢であると定義されています。
前額面後方(身体の後面)から見た左の図では、後頭隆起、椎骨棘突起(背骨後方の突起)、臀裂(お尻の割れ目)、両膝関節内側の中心、両内果(内くるぶし)間の中心を目印とし、それぞれ一直線に揃う姿勢が正常な姿勢とされています。
矢状面(身体の側面)から見た右の図では、耳垂(耳たぶ)、肩峰(上腕骨の上、肩甲骨の出っ張りの部分)、大転子(大腿骨の横の出っ張り)、膝関節前部または膝蓋骨(膝の皿)の後部、外果(外くるぶし)の前方を目印とし、がそれぞれ一直線に揃う姿勢が正常な姿勢とされています。
悪い姿勢について
ここまででの内容でわかったように、悪い姿勢とは、上記で述べた目印となる点が一直線に揃っていない姿勢のことを指します。
以下で悪い姿勢の例を示します。
矢状面から見た姿勢で、大転子の点から垂直に線を引いていますので、その線を基準に姿勢を見てみましょう。
猫背姿勢
例えば、上図の猫背姿勢では、背中が丸くなっており、この影響で基準となる線より前に耳垂が前方にあります。
この姿勢では、背中や肩甲骨を支える筋力が弱いか、うまく使うことができていないために背中が丸まってしまっている、腹圧がうまく使えておらずお腹を潰すような姿勢になっているために体がうまく伸ばせていないなどが考えられます。
逆に言えば、背中や肩甲骨まわりの筋肉を鍛えたり、腹圧をうまく使うための練習を行うことで姿勢を改善し、腰痛を治すことができるかもしれません。
他にも本当は頸が悪いため頭の重さを支えれず姿勢が悪くなっている、膝が悪いため伸び切らず、これと連動してガニ股になり、骨盤が後傾してしまい、丸い姿勢になっているなど様々な原因が考えられます。
一見姿勢良く見えるけど実は悪い姿勢
次に紹介する姿勢は、一見胸が張れていて良さそうに見える姿勢です。(良さそうに見えなければ、二宮の演技力不足です)
周りから姿勢が良いと言われている人も、大転子から基準線を引いてみると、実際は上記のような姿勢になっている場合が多く見受けられます。
この姿勢からは、骨盤が前傾しており、腰椎が過度に反っている様子が見られます。
これらの理由としては、腹筋群がうまく使えていないか、弱いために骨盤を支えきれず、お腹を突き出したような姿勢になってしまうこと、お尻やもも裏の筋肉が弱く骨盤を後ろから支えきれていないことなどが考えられます。
このように、悪い姿勢の原因は様々なものが考えられますが、これらを検査や評価によって原因を特定していくこと、腰痛が起きている原因を特定していくことができます。
腰痛の治療
腰痛には様々な治療方法がありますが、ここでは当院で実際に行っているものに対して紹介を行っていきます。
投薬治療
腰の痛みの強さや種類に応じて、患者さんの希望も踏まえながら痛み止めの処方を行っています。
当院で痛み止めを処方する際には、痛みが強い時は我慢せず服用すること、痛みがなくなったら服用を減らしていくことをお伝えしています。
特にロキソニンやセレコックスなどのNSAIDs(非ステロイド消炎鎮痛薬)に分類される痛み止めについては、炎症による痛みが治まった後はあまり効果がみられないため必ず痛みが落ち着いてきたら服用頻度を減らすようにお伝えしています。
痛み止めの種類や、痛みの種類については以下の記事もご参照ください。
注射治療
当院では、腰痛の緩和・改善の目的でトリガーポイント注射や仙骨裂孔ブロック注射といった注射治療を実施しています。
これらについて簡単に解説します。
トリガーポイント注射
トリガーポイント注射は、痛みがある部位に対して麻酔を打つ注射です。
麻酔を打つことにより、一時的に痛みを感じにくくし、痛みが原因で生じている筋肉のこわばりやそれによる神経が過敏になっている状態の改善を図ることで、継続的な痛みの軽減や凝りの改善を目指します。
全身の筋肉、筋膜、腱膜の痛みに効果が期待できますが、強い神経痛にはあまり効果が期待できません。
仙骨裂孔ブロック
お尻の割れ目(臀裂)の上あたりから、骨盤を構成する仙骨という骨の仙骨裂孔という部分に注射をします。
血をサラサラにする薬を飲んでいる人に対しては実施できず、またリハビリと同日に行うこともできませんので、注意が必要です。
物理療法
基本的に、急なぎっくり腰のような急性の痛みは冷やす、数日経った後の慢性的な痛みについては温めることを指導しています。
他に、血流を促す目的で干渉波、ウォーターベッド、ホットパック、その他には、当院にはありませんが牽引療法などを行う場合もあります。
腰痛に対してこれらの物理療法はよく行われますが、基本的に物理療法だけでは痛みの根本的な解決はできない場合が多いため、理学療法や生活指導、注射、投薬などと組み合わせて行うことが多いです。
装具療法
腰痛については、腰痛ベルトのような体幹の支持・腹圧のサポートを行う装具が主に用いられます。
コルセットとしての役割もあるため、姿勢の矯正も可能です。
痛みの軽減に効果的ですが、本来筋肉で行うことを装具に肩代わりしてもらっているような形になるので、使いすぎると体幹の筋力低下を招く可能性もあります。
使用は一ヶ月までに留めて、あまり使いすぎないようにしましょう。
理学療法(リハビリ)
腰痛の治療の一貫として、当院では理学療法士によるリハビリも実施しています。
リハビリの主な内容としては、患者様の腰痛の原因がどこにあるのかを姿勢や歩行などの動作の評価、生活の様式や習慣・職業内容の聴取、主にどのような場面で痛むのかなどについての確認を行いながら、必要に応じて、姿勢や筋力の改善、生活や仕事における動作の指導、自宅でできる自主トレやセルフケアの指導を行っています。
まとめ
今回は、腰痛について、はっきりと原因のわかる骨折や腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など以外の、原因のはっきりしない様々な腰痛の紹介や、腰痛の原因、当院で行っている腰痛治療についてお話をしました。
天神橋筋六丁目、天満、都島、南森町、東淀川区から通いやすいクリニック、天6整形外科では、手術が必要になる前に身体を治す、怪我をしてしまわない身体を作ることをモットーに診療を行っています。
- 酷い腰痛に悩まされている
- 慢性的に腰痛を抱えている
- ずっと腰が張っている感じがする
などがあれば、当院にてご相談ください。
実際に問題が大きくなり、日常生活が困難となる前に受診をすることが、早期に回復するために重要です。簡単なお悩みでも構いません、皆様のご来院をお待ちしております。